= 徒然の漢詩鑑賞 =

  杉篁庵(さんこうあん)主人の漢詩鑑賞ブログです
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春日獨酌 二首


 春日獨酌 二首  李白
 春日に独り酌む 二首


 其一
東風扇淑氣、水木榮春暉。
白日照兪陝⇒邁峪恭酥堯
孤雲還空山、眾鳥各已歸。
彼物皆有托、吾生獨無依。
對此石上月、長醉歌芳菲。

 其の一
東風 淑気(しゅくき)を扇(あふ)ぎ、
水木 春暉に栄ゆ。
白日 緑草を照らし、
落花 散じ且つ飛ぶ。
孤雲 空山に還り、
衆鳥 各(おのおの)已に帰る。
彼の物 皆 托する有るも、
吾が生 独り依る無し。
此の石上の月に対し、
長酔して芳菲に歌ふ。

 ・淑気:新春、四辺に満ちている瑞祥(ずいしよう)の気。
 ・春暉:春の暖かい陽光。
 ・空山:人気のない山。 
 ・眾:衆。多の意。
 ・托:身を寄せる(ところ)。
 ・芳菲:花や草。春をいう。

東の風は 春のめでたくなごやかな気を引き起こし、
水や木は 春の光に輝く。
輝く太陽が 緑の草を照らし、
落ちる花びらが 散りまた舞う。
ひとひらの雲も 人気ない山に還り、
鳴き騒いでいた鳥達も それぞれねぐらに帰ってしまった。
それらは皆身を寄せるところがあるというものの、
吾が生は独り身を寄せるところもない。
この時この場所で石の上に上る月に対し、
ひたすら酔って春に歌うたうしかない。


 其二
我有紫霞想、緬懷滄洲間。
且對一壺酒、澹然萬事閑。
垓徙畊眈勝把酒望遠山。
長空去鳥沒、落日孤雲還。
但恐光景晚、宿昔成秋顏。

 其の二
我 紫霞の想ひ有りて、
(はるか)に懐(なつか)しむ 滄洲の間。
且つは一壷の酒に対し、  
澹然(たんぜん)として万事閑なり。 
琴を横たえて高松に倚り、
酒を把って遠山を望む。
長空 鳥去って没し、
日落ち 孤雲還る。
但だ恐る 光景の晩(くれ)て、
宿昔 秋顔を成すを。

 ・紫霞想:仙人は紫の朝(夕)焼けに乗るという。仙人志願の思い。
 ・緬:遙かな。
 ・滄州:水辺の土地、の意で、古来、隠者の棲む場所をさす言葉として用いられる。
 ・澹然:物事にこだわらないさま。また、静かなさま。
 ・光景:光陰。月日。歳月。
 ・宿昔:昔の紅顔(若さ)の意。
 ・秋顔:老顔。

私は仙人になって、紫霞に乗りたいと志し、
常々はるかに隠者の棲む滄洲の地を偲んでいる。
なおその上に一壷の酒に対して、
何もこだわらず、浮世の事もすっかり忘れるほどの長閑さ。
琴を横たえて、高い松の木に倚りかかり、
酒を把って、遠い山を眺めやっている。
やがて大空に鳥は去り姿も見えず、
日も落ち、取り残された雲だけが流れて行く。
ただ恐れるるところは、光陰の移ろいに、
昔の紅顔が、やがて老いに変ずることである。




10:42 | 李白 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark
陪族叔刑部侍郎曄及中書賈舍人至游洞庭 五首

次回と予告したので読んでは見たが、不明な点が多い。とりあえずの読みです。


陪族叔刑部侍郎曄及中書賈舍人至游洞庭 五首 李白
族叔(ぞくしゅく)刑部侍郎(けいぶじろう)(よう)及び中書(ちゅうしょ)賈舎人至(かしゃじんし)に陪(ばい)して洞庭(どうてい)に游(あそ)
(「陪族叔刑部侍郎曄及中書舎人賈至遊洞庭湖」となっているものもある)

 其一
洞庭西望楚江分,水盡南天不見雲。
日落長沙秋色遠,不知何處弔湘君。

洞庭 西望するや楚江(そこう)分れ、 
水尽くる南天は雲を見ず。
日落ちて長沙(ちょうさ)秋色遠く、
知らず、何れのところにか湘君(しょうくん)を弔(とむら)ふ。

・楚江:長江。
・長沙:中国、湖南省の省都。洞庭湖の南、湘江下流の東岸に位置する。
・湘君:湘水の女神。舜の二妃、江湘の間に死し、俗に湘君という。

洞庭湖から西方を望むと長江が分流し、
湖水の尽きる南の空は一点の雲もなく晴れ渡っている。
やがて夕日は落ち長沙の街は遠く秋の色に染まっている。
ただ洞庭湖は広々として舜帝の後を追い湘水に身を投げた娥皇と女英を弔うのがどのあたりか見当もつかない。

 其二
南湖秋水夜無煙,耐可乘流直上天。
且就洞庭賒月色,將船買酒白雲邊。

南湖(なんこ)秋水 夜 煙無く、
(なん)ぞ 流れに乗じて直ちに天に上(のぼ)る可(べ)けんや。
(しばら)く洞庭に就(つ)いて月色を賒(か)り、
船を将(も)って酒を買ふ 白雲の辺(ほとり)。 

・煙:霞や靄。
・賒:つけで買う。割賦で買う。

南湖の秋の夜 靄一つ無く召貪呂辰討い襦
水の流れに乗って、このまま空まで昇れるだろうか。
せめてこの洞庭湖に 月の光りをツケに、
船を漕ぎ酒を買い白い雲のほとりで飲もう。

 其三
洛陽才子謫湘川,元禮同舟月下仙。
記得長安還欲笑,不知何處是西天。

洛陽の才子 湘川に謫(たく)され、
元礼 同舟す 月下の仙。
長安還りて笑はんと欲するを記し得たるも、
何れの処か是れ西天なるを知らず。

・洛陽才子:前漢の賈誼(かぎ、紀元前200年−紀元前168年)前漢時代の政治思想家、文章家。長沙王の太傅として左遷。
・謫:流罪にする。
・元禮:李膺(りよう110〜169)。潁川襄城(河南)出身。字は元礼。孝廉をへて司徒掾となり、地方官に転じて主に北辺諸官を歴任した。宦官が壟断する朝政を批判して士大夫の中心的存在となったが、166年に河南尹のときに偽占者の張成を処刑したことで誣告され、竇武らの嘆願で禁錮とされてからは郷里で私塾を開き、名士の領袖の一人として三君に亜ぐ八俊の筆頭に数えられた。霊帝が即位すると召されて任用されたが、翌年に党人捕縛が命じられると「事不辭難,罪不逃刑,臣之節也。吾年已六十,死生有命,去將安之!”難事に当たって辞せず、罪となって刑から逃げないのは臣下としての節度だ。私はすでに六〇歳。生死は天命にあり、去るとしても行くべき処がない」と答え、獄に下り死罪となった。このことをふまえての句であろうか。判然としない。
 なお、この李膺は剛直な性格で、相手が宦官であろうが、皇帝であろうが、命を惜しまずに筋を通し「天下の模楷(模範)は李元礼」と評され、知縁の仲介を除いて面接する事が稀で、そのため李膺の知遇を得ることは士大夫社会で非常な栄誉とされ、李家の門は黄河の龍門になぞらえて“登竜門”と呼ばれた。登竜門の故事である。
・月下仙:月に住む仙女、不死の薬を盗んで飲み、月に入ったといわれる姮娥(こうが)嫦娥(じょうが)。転じて、月の異称。
・記得:(過去の)…を覚えている。
・西天:浄土、極楽世界。

洛陽一の才人といわれた賈誼は湘川に左遷され、
天下の模範といわれた元礼も月とともに船に乗る(?月下に冥途に旅立った)。
再び長安に帰り楽しみたいと思ってはいたが、
極楽世界はどこにあるものやらわからない。

 其四
洞庭湖西秋月輝,瀟湘江北早鴻飛。
醉客滿船歌白苧,不知霜露入秋衣。

洞庭の湖西に秋の月輝やきて、
瀟湘の江北に早くも鴻(おおとり)飛ぶ。
酔客船に満ち白苧を歌ひ、
霜露の秋衣に入るを知らず。

・瀟湘(せうしやう):中国、湖南省を北流する瀟水と湘江。また、その二河の合流する洞庭湖南部。
・鴻:オオカリ。(渡り鳥)
・白苧(はくちょ):「白紵の曲」。・苧(チョ・を):からむし。イラクサ科の多年草。高さ1メートル以上に達する。葉は広卵形で、下面に白綿毛を密生する。七、八月頃、黄白色の小花を多数密生する。苧麻(ちよま)。マオ。麻の古名。

洞庭湖の西に秋の月は輝き、
瀟江と湘江の合する北には早くも鴻雁が飛んでいる。
酔った客は船に滿ちて白紵の曲を歌い、
夜ふけて霜や露が秋の衣に沁み透るのも気づかない。

 其五
帝子瀟湘去不還,空餘秋草洞庭間。
淡掃明湖開玉鏡,丹青畫出是君山。

帝子瀟湘に去りて還らず、
空しく余す秋草洞庭の間。
淡掃の明湖 玉鏡を開き、
丹青の画き出すは是れ君山。

・帝子:堯の娘。娥皇と女英。共に舜の后や妃になった。帝子は、夫の舜の崩御を嘆き悲しみ、湘江で溺死した。
・淡掃:薄化粧。
・丹青:赤と青。絵の具、色彩。
・君山:洞庭湖の湖中の島、島全域に古代伝説にちなむ旧跡が散らばっている。

舜の跡を追って娥皇と女英は湘江で死に、
洞庭湖の周りにはむなしく秋の草が揺れている。
薄化粧の明るい湖は波静かで、
君山を美しく映し出している。

(刑部侍郎をしている親戚の李曄おじさんと中書舎人の賈至さんのお供で、洞庭湖で遊んだときの五首の歌)

12:06 | 李白 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark
陪侍郎叔游洞庭醉後三首
 陪侍郎叔游洞庭醉後三首 李白
 其一
今日竹林宴,我家賢侍郎。
三杯容小阮,醉後發清狂。

 其二
船上齊橈樂,湖心泛月歸。
白鷗閑不去,爭拂酒筵飛。

 其三
剗卻君山好,平鋪湘水流。
巴陵無限酒,醉殺洞庭秋。

 侍郎叔(じろうしゅく)に陪(ばい)し洞庭に游(あそ)びて酔ひし後の三首
 其の一
今日の竹林の宴、
我が家の賢侍郎、
三杯にて小阮を容し、
酔ふて後 発(つまび)きて清狂す。

 其の二
船上に橈(かい)を斉(そろ)へて樂しみ、
湖心に月を泛(うか)べて帰る。
白鴎閑として去らず、
(いかで)払はん酒筵に飛ぶを。

 其の三
剗却(せんきゃく)すれば君山の好(よろ)しく、
平鋪して湘水の流る。
巴陵に酒限り無く、
酔殺す洞庭の秋。

・陪:伴をする。付き合う。
・侍郎叔:「侍郎」職の叔父の李曄(よう)
・洞庭:洞庭湖(どうていこ)湖南省北東部にある中国最大の淡水湖。湘水(湘江)、沅水(沅江)などが流れ込んで長江に注ぐ。湖畔や湖中には岳陽楼や君山などがあり、瀟湘八景などの名勝に富む。
・賢:同輩や後輩に対する敬称。
・侍郎:秦・漢代、謁見の取り次ぎをつかさどった職。
・小阮:竹林の七賢の一人である阮咸。阮咸が愛用した中国の撥弦(はつげん)楽器。琵琶。初句の「竹林宴」はこれをかけての表現。
・發:撥。弦をはじいて鳴らす。
・清狂:のびやかにひたりきること。気ままに自由に振る舞う。
・容:用いる。持つ。
・発:阮咸が愛用した中国の撥弦(はつげん)楽器を爪弾く。
・橈:船の櫂(かい)。
・筵:〔敷物・むしろの意〕座席。催しや酒宴の席。
・剗卻(せんきゃく):「削・平」の意。けづる。除き去る。卻は助字として他の動詞の下に添える。南宋の陸游の「樓上醉歌」に、この詩による「剗却君山湘水平,斫却桂樹月更明。」の一節がある。
・君山:洞庭湖の岳陽楼の対岸(湖中)にある山。洞庭山。
・平鋪:たいらかにひろがる。
・湘水:湘江。広西省を源とし,洞庭湖湖南に流れ入る川。
・巴陵(はりょう):岳陽県南西の山の名、岳陽県の地方。ここは「岳陽(洞庭湖)」の意。
・醉殺:酔いつぶれる。殺は《補語として》程度が甚だしいことを示す。

侍郎をしているおじさんのお供で、洞庭湖に遊んで酔いつぶれたあとの歌である。
今日の宴会では、
曄叔父さん、
三杯飲んで琵琶を抱え、
酔っぱらつて思いのままに爪弾いた。

洞庭湖に船を浮かべて樂しみ、
湖面に浮かぶ月を眺めた。
白い鴎は船の周りを飛び、
宴席はなお趣深い。

目前の君山を平らかにすれば、
湘水はゆったり広がり流れ入るのだろうか。
そんなこともなかろうが、酒は限り無くあり、
洞庭湖の秋を満喫してひたすら酔いつぶれたのだった。

このとき詠んだのであろう、「陪族叔刑部侍郎曄及中書賈舍人至游洞庭 五首」もある。これは次回。


12:30 | 李白 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark
贈汪倫


 いかにも酒好きだった李白の挨拶らしい詩である。


  贈汪倫 李白
(白游痳囘躄巛。村人汪倫常醞美酒待白)
李白乘舟將欲行,
忽聞岸上踏歌聲。
桃花潭水深千尺,
不及汪倫送我情。


  汪倫に贈る
(白畍の桃花潭に游ぶ。村人の汪倫常に美酒を醞(かも)し白を待つ )
李白舟に乗って将(まさ)に行かんと欲し、
(たちま)ち岸上に踏歌(とうか)の声を聞く。
桃花潭(とうかたん)の水 深さ千尺あれど、
汪倫の我を送るの情に及ばず。


  汪倫に贈る(詩)
(私は安徽省の畍にで遊んだが、いつも村人の汪倫は美酒を醸造して私を待っていた)
李白(私)が舟に乗って、いざ帰ろうとするその時、
思いもかけず聞こえてきたのは、岸辺で足を踏みならし調子をとりながら歌うにぎやかな歌声であった。
ここ桃花潭の水は、その深さが千尺あるというが、
汪倫よ、君が見送ってくれる友情の深さには、とうてい及びもつかないことです。
(「王倫」は、地方の豪族で李白のパトロンあるいは酒を作ることを業とした村人の名であろうという。)



10:12 | 李白 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark
山中対酌幽人


これは李白の詩の中でもよく知られている名高いもの。

 山中對酌幽人 李白
兩人對酌山花開
一杯一杯復一杯
我醉欲眠卿且去 
明朝有意抱琴来 

「山中に幽人と対酌す」
両人対酌すれば山花開く
一杯 一杯 復た一杯
我酔うて眠らんと欲す 卿(きみ)(しばら)く去れ
明朝 意有らば 琴を抱いて来れ

・幽人:世を逃れて静かに暮らしている人。
・卿:夫婦や友人間で互いに呼んだ呼称。相手の貴人を敬っていう。あなた。

二人差し向かいで酒を飲んでいると、山の花が開いていく。
一杯、まあ一杯、またまた一杯。
私はどうやら酔って眠くなった。君はまた、好きにしてくれ。
明日の朝、その気になったら琴を持って来てくれないか。



10:58 | 李白 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark
客中作
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酒の詩をしばらく続けてみよう。
さて、白玉の酒杯に注がれた薫り高く輝く琥珀色の銘酒を飲めば、異郷に身を置く孤独感も忘れられるという。


  客中作 李白
蘭陵美酒鬱金香 
玉椀盛来琥珀光 
但使主人能酔客 
不知何處是他  

 「客中(かくちゅう)の作」
蘭陵(らんりょう)の美酒 鬱金香(うこんこう)。
玉椀(ぎょくわん)に盛り来たる 琥珀(こはく)の光り。
(ただ)主人をして 能(よ)く客(かく)を酔はしむるに、
何れの処か是れ他郷なるを知らず。

・題は「客中行」とも。・行:歌行。「…行」は楽府に付く「詩・歌」の意。
・蘭陵:山東省の南部、名酒の産地として有名。現在の山東省棗荘市。
・鬱金香:酒に浸して、色や香を附ける香草。「郁金香」とする本もある。
・琥珀:コハク。松ヤニの樹脂の化石。透き通った深い黄色の玉(ぎょく)。
・玉碗:玉杯。
・但使:ただ…しさえすれば。ただ…のようにさせれば。

 「旅先での作」
蘭陵で産する美酒、その名は鬱金香。
透明な白玉の杯になみなみとつがれ、琥珀色に輝く。
この酒席の主が、旅人である私を存分に酔わせてくれるので、
他郷ゆえの寂しさを忘れるほど飲んでしまった。



17:56 | 李白 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark
待酒不至

四月末、ゴールデンウィークに入るからか、天気がいいからか、家の中にも人気がなくなった。みんな出かけているのだが、一昨日庭いじりに石を運んだら腰を中心にあちこち痛む。
北軽井沢に出かけようと思うのだがまだ最低気温がマイナス。予報では五月に入ればこの冷え込みを脱しそうなのでそれからになりそう。
朝から酒を飲むのもなんだなぁーと酒の詩を読む。


  待酒不至 李白
玉壺繫青絲  
沽酒來何遲  
山花向我笑  
正好銜杯時  
晩酌東窗下  
流鶯復在茲  
春風與醉客  
今日乃相宜 



「酒待てど至らず」 
玉壺 青絲に繋(か)け、
酒を沽(か)ひて来ることの何ぞ遅き。
山花 我に向ひて笑ひ、
正に杯を銜(くく)むに好(よ)き時なり。
晩酌する東窓の下(もと)
流鶯復た茲(ここ)に在り。
春風と酔客と
今日(こんにち)乃ち相ひ宜し。


美しい酒壺を洒落た糸縄に繋いで、
酒を買いにやらせたが、帰ってくるのが何と遅いことか。
山の花が私に微笑みかけるこの頃は、
まさに飲むには絶好の時なのだ。
東の窓の下に晩酌していると、
鶯が飛んできて囀っている。
春風と酔客とが、
今日は本当に互いに好ましい様子ではある。


この詩はホームページを作り始めたとき杉戸の杉篁庵は流鶯が囀り続けているので「庵の名に寄せて」で紹介していた。そこでは「銜(くく)む」を「ふくむ」と読んでいる。


12:01 | 李白 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark
前有一樽酒行二首
これも李白の春の酒を詠ったもの。

「前有一樽酒行二首」 李白
 其一
春風東來忽相過,金樽淥酒生微波。
落花紛紛稍覺多,美人欲醉朱顏酡。
青軒桃李能幾何,流光欺人忽蹉跎。
君起舞,日西夕。
當年意氣不肯傾,白髮如絲歎何益。



 其二
琴奏龍門之儷諭ざ猛簇酒清若空。  
催弦拂柱與君飲,看朱成碧顏始紅。  
胡姫貌如花,當壚笑春風。     
笑春風,舞羅衣。  
君今不醉欲安歸。
         (雑言古詩・樂府) 


「前に一樽の酒有るの行(うた)」李白
  其の一
春風東より来たり忽ちに相ひ過ぎ、
金樽の酒を淥(こ)して微波を生ず。
落花の紛紛として稍(やうやう)に多きを覚へ、
美人酔はんと欲して朱顔酡(あか)らむ。
青軒の桃李 能(よ)く幾何(いくばく)
流光 人を欺きて忽ちに蹉跎(さた)す。
君 起ちて舞へ、日は西なる夕べなり。 
年に当り意気傾むくを肯(がへ)んぜず、
白髪絲の如きも歎きて何の益あらん。

 其の二
(きん)は龍門の緑桐(りょくとう)を奏し、
玉壷(ぎょくこ)の美酒は清きこと空の若し。
絃の柱を払ふを催(うなが)し君と与(とも)に飲み、
朱を看(み)て碧(へき)と成せば顏始めて紅し。
胡姫の貌(かんばせ)は花の如く、
(ろ)に当(かな)ひて春風に笑ふ。
笑へる春風は、羅衣(らい)に舞ふ。
君今酔わずして安(いづ)くに帰らんと欲するや。

・淥:漉。濾。こす。
・蹉跎:つまずく。いたずらに時が過ぎる。
・柱:音階を調節するための琴柱。
・壚(ろ):酒を売ったり酌をしたりするところ。
・羅衣:踊り子の薄ものの着物。


春風は東から来て、瞬くうちに吹き過ぎ、
樽の酒にさざ波をたてている。
はらはらと落ちる花びらは数を増し、
ほろ酔いの美人の紅い頬は更に赤らむ。
桃の花はいったいどれほど美しく咲いていられるであろう、
時はゆっくり流れると見せ、いたずらに過ぎてしまうもの。
さあ、踊ろう、日は傾いてはや西の空。
歳とっても気持ちが萎えることはないのだ、
糸のような白髪を歎いてなんのいいことがあろうか。


奏でられる琴は龍門の緑桐製の名器、
玉の壷に満たされた美酒は空のように青く澄んでいる。
更に琴を促して君と飲み、
朱色のものが緑に見えるほどに酔って、初めて顔が紅くなる。
西域の娘の顔立ちは花のように美しく、
この店でお酌をしながら春風のように笑う。
笑いながら春風に、薄ものの衣を翻す。
君は今ここで酔わずしてどこへ行こうというのです。


漢代から歌い継がれた樂府も、酒仙李白によれば華麗な詩となる。
それぞれ結びの句がなんともいい味わいを持っている。


なお、「行=歌行」とは、楽府題の一つで、四言五言また七言の作品があるが、定型の名称ではない。白居易に琵琶行、杜甫に貧交行、曹丕の作品には短歌行・秋胡行・燕歌行などがある。


14:14 | 李白 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark
戴老酒店

李白が得意とした題材のひとつが「酒」。
その五言絶句になんとも味わい深いものがある。
次の詩である。

 「戴老酒店」 李白
戴老黄泉下 還應醸大春 
夜臺無李白 沽酒與何人

戴老(たいろう)は黄泉(こうせん)の下にて、
(な)ほ応(まさ)に大春(だいしゅん)を醸(かも)すなるべし。
夜台には李白無きに、
何人に酒を沽(う)り与へんや。

酒造り名人の戴の爺さんは死んじまったが、黄泉の国でも、
きっと自慢の銘酒「大春」を造っているに違いない。
しかし、冥土には(真の酒飲みでこよなく酒を愛する)李白はいないのだ、
いったい誰にその酒を飲ませるつもりなのだろう。
「大春」は酒の銘柄。「夜臺」はあの世。

この詩、『全唐詩』『李白詩全集』では、
紀叟黄泉裏 還應醸老春 
夜臺無暁日 沽酒與何人 (「哭宣城善醸紀叟」)
となっている。
こちらは、紀の爺さまで、酒は「老春」、三句目は「あの世には朝日もささないのに」となる。


日本では
紀叟黄泉裏 還應醸老春
夜臺無李白 沽酒與何人
としているものが多い。


13:01 | 李白 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark
春日酔より起きて志を言ふ

 李白のこの詩も酔い心地を詠ってなんとも気持ちいい。


  春日醉起言志  李白
 處世若大夢,胡爲勞其生。
 所以終日醉,頽然臥前楹。
 覺來眄庭前,一鳥花間鳴。
 借問此何時,春風語流鶯。
 感之欲歎息,對酒還自傾。
 浩歌待明月,曲盡已忘情。

  春日酔より起きて志を言ふ  李白
世に処(お)るは大いなる夢の若(ごと)し、
胡為(なんすれ)ぞ其の生を労せんや。
所以(このゆえ)に終日酔ひ、
頽然(たいぜん)として前楹(はしら)に臥す。
覚め来って庭前を眄(なが)めやれば、
一鳥 花の間に鳴く。
借問す 此れ何れの時ぞ、
春風に 語らふ流鶯。
之に感じて嘆息せんと欲し、
酒に対してまた自ら傾く。
浩歌して明月を待つも、
曲尽くれば已に情を忘る。


世の中を生きてゆくことは、大いなる夢のよう、
どうして、生きていくことに気苦労するのか。
それゆえ、朝から晩まで、酔って、
酔いつぶれれて、まるい柱のところで横になってしまう。
目覚めて庭先を眺めると、
一羽の鳥が咲き乱れる花の中で鳴いている。
お訊ねしたい、これは一体なんという素晴らしい時なのかと、
春風が吹き、ウグイスは木々を飛び移り囀っている。
この情景に感動しようと、
酒器に向かって、また、杯を重ねる。
大いに歌うたって、明るい月の出を待っていたが
音曲が終われる時には、すっかりと出来上がってしまった。



13:51 | 李白 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark

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